アベル・バロッソ(Abel BARROSO)
美術家。1971年、ピナール・デル・リオ(キューバ)生。
キューバ国立芸術院在学中に作家活動を本格化。木版画のポジとネガの関係、さらに版画の平面性と立体性を下部構造的な問題意識とするその造形作品は、キューバの社会や政治、文化状況といった問題を取り上げることで、社会主義圏キューバ崩壊後のキューバの抱える問題を示唆している。近年は、「インターネット第3世界」と題されたプロジェクトにおいて、グローバリゼーションや高度情報化社会に巻き込まれつつあるキューバという国の電脳化の問題を、アナログな木版画的な手作業で、世界的視座の中に暗喩的に提示する作品を発表。キューバ社会主義の独自性を通してうかがえる20世紀という時代性、さらには情報社会化する21世紀的な国際性への、穏やかな揶揄と風刺が読み取れる。
現在までに、キューバ国内ではハバナビエンナーレのほか、ウィフレド・ラム・センターや視覚芸術発展センターなどの国立機関、海外ではドイツ、カナダ、アメリカなどで個展を開催。グループ展は国内外多数にのぼる。
川俣正(かわまた・ただし)
美術家。1953年、北海道生まれ。
1977年、東京芸術大学在学中に活動を開始して以来、世界各国でプロジェクトを展開している。既存の建物を大量の木材で囲み込む比較的初期のインスタレーション作品(84年「工事中」など)から、自動販売機の裏に仮設の部屋を設置し人を住まわせてみる近年のプロジェクト(98年「東京プロジェクト」)に至るまで、作品の発想はつねに変化し続けているが、いずれのプロジェクトにおいても、作品の完成じたいにではなく、むしろそこに至るプロセスの中で発生するさまざまな(ディス)コミュニケーション、そしてそのような経験を通じて浮かび上がるそのサイトの固有性といった問題への、作家の一貫した関心をうかがうことができる。
ドクメンタ、サンパウロ・ビエンナーレ、ミュンスター彫刻プロジェクトなどの国際展に多数参加。日本でのプロジェクトとして、「コールマイン田川」、「松之山プロジェクト」などが現在も継続中。
※バロッソ氏プロフィールにつきましては、今回の個展「アベル・バロッソ展──第3世界のインターネット・カフェ」の仕掛け人のお一人である正木基さん(目黒区美術館)にご提供いただいた文章をもとに作成いたしました。記して感謝いたします。
なお、プロモ・アルテのウェブサイトには、バロッソ氏の作品写真のほか、正木さんをはじめ、東京での個展開催にたずさわられた3人の方による、バロッソ氏の作品の紹介文が掲載されています。ハバナでの出会いから今回の個展に至るまでの経緯も含め、パッションに溢れたその意気込みに触れてみて下さい。
http://www.promo-arte.com/jpn/ex_files/abel_barroso.html
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